実際に介護をしている人には、さまざまな苦労や心配があります。
高齢者の起床・食事・排尿や排便・入浴などの日常生活について、その都度必要な介助をする。
汚れ物の洗濯や掃除など、増えた家事をこなす。
介護保険など公的なサービスを受けるために、さまざまな手続きを行う。
これを全部一人で行うのは、本当に大変だと思います。
全部一人で行うのは大変です
さらに、だんだん高齢者が衰えていく将来の不安や、必要な介護用品をそろえる経済的負担。介護する相手との摩擦やストレス。
介護している方が、肉体的や精神的にまいってしまうこともあります(極端な場合は、介護うつになるケースもあります)。
そうならないために、少しでも役割分担を考えましょう。
例えば、夫婦で暮らしていて、相手の介護をしている場合(老老介護)。
実際に日常生活の世話をするのは、やはり一緒に暮らしている者になります。
しかし、子どもがいて別家庭で暮らしているのなら、子どもにいろいろなサービスを調べてもらい、その手続きをしてもらいます(あるいは、具体的な指示をしてもらう)。
子どもが遠く離れた場所で暮らしていて手続きが難しいなら、介護にかかわる金銭の補助をしてもらう(介護保険の利用者負担金の引き落としを、子どもの口座に設定するなど)。
家族全員で介護に取り組むことも大事です
また、子どもやその配偶者が、同居している高齢者(姑や舅)の介護をしている場合。
家事を主に行う人が日常生活の介助を行い、もう一人が諸手続きなどを行います。
さらに、夫婦に子どもがいれば、年齢にあわせてお手伝いをすることで、家族一緒に介護をしている意識を持ってもらいます。小さな子どもなら、毎朝起きるように声をかける役割とか、学生の子どもなら夜のベッドを整えて高齢者を布団に導く役割とか。ささやかな手伝いでもいいので、できるだけ高齢者と毎日、直接かかわることがよいでしょう(子どもが母親の手伝いではなく、高齢者の世話をしている意識を持つ)。
こうしてみんなが、高齢者の体調や様子の変化を感じることで、報告したり話し合ったりして、家族全員で問題意識を持って介護にのぞめます。
介護のプロに質問してみましょう!
さらに、チームには、家族だけでなくプロも必要です。
主治医やケアマネジャーがいる場合、それぞれに「主治医がこう言ってました」と報告したり、「ケアマネジャーに何をお願いすれば改善しますか」と相談しましょう。
きっと、家族が思いつかないようなアドバイスやヒントがもらえるかもしれません。
また、ふだんから両者の考え方や方針を家族が伝えることで、相互理解も深まります。
各市町村には、地域包括支援センターがあります。また、市町村役場には福祉課などの窓口があります。このようなところでは、介護家族会の案内や介護情報の発信などを行っています。
家族会で同じ立場の人の話を聞いたり、自分のことを話して、仲間をみつけるといいでしょう。積極的な参加が苦手な人は、講演会で話を聞くだけでも、ヒントが得られるかもしれません。
身近なところでは、トレーニングパンツ(紙おむつ)を買うときに、お店の人に相談するだけでも気持ちが軽くなることがあります。種類や使い方以外に「こんな利用方法の人もいますよ」とか、「みなさん同じようにお困りですね」と言葉をかけてもらい、ほっとします。
高齢者の状況にあわせて、便利な介護用品を教えてもらえるかもしれません(買わなくても聞くだけで、「いまどきはこんな品があるんだ」と思えばいいのです)。
介護はチームで!
高齢者介護をしている人は、世の中に大勢います。
特別なことや恥ずかしいことではないですから、相手との関係や立場によって「この人にこのことを話してみようかな」と、不安をこぼしてみるといいでしょう。
最初は適切なアドバイスがもらえなくても、だんだん「こういう時はこういう人に相談すると、自分に役立ったり心が軽くなる言葉をもらえる」と、話すべき相手がわかってきます。
とにかく、介護に少しでもかかわる人たちを自分のチームメートだと思い、みんなを巻き込んでいくような気持ちで過ごしましょう。
けっして「一人でがんばらなくちゃ」と思わないように、どうぞたくさんのチームメートをみつけてください。
(文:原 智子)
1. 介護のコツ
2. 高齢者の健康
3. 認知症の介護
原 智子
<フリーライター>
1968年生まれ、東京都在住。
タウン誌編集を経て、フリーライターとして雑誌で街情報などを執筆。
夫と夫の両親の四人暮らし。2010年から義父が認知症で、現在義母とともに介護に奮闘中。
介護のことで悩んだり失敗しながら生活していますので、みなさんの感想や情報も教えてください!
趣味は、天文・カーリング・サッカー観戦など。