オススメの介護施設を紹介!介護施設訪問

第1回 ~岡山県笠岡市~ 社会福祉法人 新生寿会
「きのこ老人保健施設」

関連カテゴリー

認知症

ユニット・ケア

大切なのは、お年寄りを敬い、共感できる「感性」を持ったスタッフを育てること

自分の居場所
ユニットごとに異なる風情

きのこ老人保健施設をはじめ同グループでは、設立当初から福祉先進国のスウェーデンにスタッフを送って視察研修を重ね、いち早く建物やユニット・ケアなど環境面の整備に力を注いできましたが、ユニット・ケアが全国的に定着する中、ここ数年は、「バリデーション」を活用した人材教育に力を入れています。

中でも、注目したいのが「お年寄りを敬い、尊重し、共感をもってコミュニケーションできるスタッフを育てる」という新人研修です。今年度はグループ全体で約50人の新人が、この研修を受けました。

「背景には、利用者さんとコミュニケーションの取れない若い介護者が増えている現実があります。知識やスキル以前に、お年寄りと出会って何かを感じ取れる感性が欠如しているんですね。その結果、仕事にやりがいを見出せず離職しまう。では、どうすれば、そんな感性が養えるか。どうすればスタッフが喜びややりがいを感じて仕事に向かってもらえるかということを考えたのが、この研修の始まりでした」(篠崎施設長)。

新人研修の期間は約3カ月。一般企業や飲食店に出向して行うこともあるという接遇研修を経て、2ヶ月目から実際に現場に入って利用者さんと触れ合います。
「先生や先輩から教わるのではなく、お年寄りと関わることで悩み、考える。いわば『自分から気付いていく』研修です。バリデーションは、認知症の高齢者に尊敬と共感をもって関わるコミュニケーション法ですが、この手法を取り入れることで利用者さんとのコミュニケーションが深まるだけでなく、介護者自身も感動や喜びを得ることができるのが特徴です。短時間で成果が出るものではありませんが、研修を受けたスタッフの多くが『利用者さんと心と心がふれ合い、共感する事で自分自身の成長を感じることができた』と感想を寄せています」。(篠崎施設長)

きのこグループの新人研修の試みは、DVD『お年寄りと向き合い、自分自身と向かい合う』に編集制作され、筒井書店から販売されています。

役割増す「擬似家族」の力

自分の居場所
スタッフとおしゃべりが弾みます

きのこグループでは、2004年以降、グループホームと小規模多機能施設を核に東京方面にも拠点を広げてきましたが、2010年4月には東京都港区に特別養護老人ホームとグループホーム・ケアハウスなどを包括する高齢者総合保健福祉施設「ありすの杜 きのこ南麻布」をオープンしました。

「ユニット・ケアも個室化もいまや施設ケアでは当たり前になりましたが、これからの施設ケアは何か必要になり、また、どう変わっていくのでしょうか?」
最後に篠崎施設長に問いかけてみました。

「家族の結びつきが希薄になる中で、施設が忘れ去られた家庭の“代用”ではなく、ホンモノの家族や家庭になればいいと思います。そのためにも介護に関わるスタッフの感性や人間力はますます求められるでしょうね。また、少子高齢化で人口が激減するこの国で、外国人介護士に対してもっと門戸を広げなければ介護は成り立たないと危惧しています。真の豊かさとは何か。私たちはそろそろ経済成長のみを評価する経済優先の考え方を卒業して、新しい価値観を生み出す時期に来ているのではないでしょうか」。

(取材・編集:リハビリネット編集部/池永美佐子)

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