知っておきたい!介護のいろは

介護のコツ その④ ~困ったことは原因をさがす(自己流の手抜きで対応)~

困ったことは原因をさがしましょう
お互いのコミュミケーションが
うまく取れずにイライラ…

高齢者介護の生活が始まると、それまでの日常生活に加えて介護の世話が増えて、とても忙しく慌ただしい気持ちになります。
しかし、高齢者(介護される人)の立場から考えると、自分の体や意識がだんだん思うように動かなかくなり、落ち込んだり悔しかったりします。ときには、スムーズに動かない部分が痛くて、辛く悲しい気持になっているかもしれません。

そのままの状況では、介護している人は「自分は忙しいのにだんだん動かなくなって、世話が増えるばかりだ」とイライラするし、高齢者は「自分はどんどん衰えて困るばかりで、どうしたらいいか自分でもわからない」とやっぱりイライラしてしまいます。

介護生活は、介護する人の“がんばる気持ち”だけでは解決しないことが多くあります。具体的に問題の原因をさがして解決方法を探すことが、介護する人にとっても介護される人にとっても生活が楽になるケースがあります。

<例えば、こんなことで困っていませんか?>

①トイレの排便や排尿を失敗して、周りを汚してしまった。
②トイレまで間に合わなくて、衣類を汚してしまった。

これらは、高齢者本人もかなりバーバスになる問題です。
介護者としては「どうして汚すの」「なぜ、もっと早くトイレに行かないの」と思ってしまいます。最初は、「もう少し注意して用を足してください」とか「早めにトイレに行きましょう」とか声をかけると思いますが、多くの場合は失敗が増えていきます。
こんなときは、まず健康上の原因がないか泌尿器科で診てもらい、治療が必要な場合は受診し、異常がなければ高齢者が少しでも改善しやすい方法を探します。例えば……

足を置く位置に目印を付ける
困ったことはちょっとした工夫で
改善できるケースもあります

①トイレを汚さないためにもっと便器の近くで用を足せばよくなるかも→足を置く位置に目印を付ける
②家族がうながしても行かないなら→タイマーを用意して「この音楽はトイレ時間」など決める

それでも改善しないなら、次の段階として、自分の作業を楽にする方法を考えます。例えば……

①トイレ掃除を簡単にする→掃除道具をコンパクトにまとめて、使い捨て洗浄シートなど自分が使いやすい方法をパターン化する。
②洗濯を減らす→下着を使い捨てトレーニングパンツに替えるなど。
着替え作業を簡単にする→近くに箱を用意し着替えを1セット入れておき、タンスをあちこち開けなくても着替え作業が進むようにする。

③閉じこもりがちで、活動量が少なく、体力が衰えてきた。

閉じこもりがちになってきたのが心配です
まずは声をかけてみましょう

これは、高齢者本人にとってはあまり関心がない問題かもしれません。
介護者としては「散歩に出かけたらどうですか」「運動しないと寝たきりになりますよ」と注意すると思います。でも、もしかしたら、体のどこかが痛いのかもしれないし、外に出ることが面倒になっているのかもしれません。
こんなときは、まずケガや病気をしていないかかかりつけ医に診てもらい、異常がなければ、高齢者に出かけるようしむけます。例えば……

家族の一員としての役割
家族の一員として役割があることを伝えます

○外出する用事を頼む→簡単な買い物など用事を頼んで、近所に出かけてもらう。
○日課を作る→庭掃除など分担を決めて、「お願いします」と頼んでやらせる。
高齢者が家族の一員として役割があることを、具体的に提案して行動してもらいます。

それでも、出たがらない場合は、精神的に何か原因があるのかもしれません(トイレが心配、知人に衰えた自分を見られたくない、やる気が出ないなど)。その原因をさぐり、対処できればいいのですが、難しい場合は自宅の中で用事を頼んで歩いてもらいます(新聞を持ってきてもらうなど)。たとえ少しの動作でも、なにもせずに座っているだけより、筋肉や肺活量のトレーニングになります。

高齢者の失敗は子どもの失敗と違い、怒ったりたしなめたりして上達する(回復する)ことはまれで、ほとんどは衰えていく一方です。また、問題とその対応は人によってさまざまで(同じ人間でも状態がどんどん変わる)パーフェクトの答えはありません。
まずは、問題の原因をさぐり、それに対処することが第一歩です。高齢者が自分で動けるように、目印を付けたり簡単な動作でできるように考えて工夫します。それでも上手くいかない場合は“受け入れ”て、介護者自身の作業が簡単になるように“自己流の手抜き”方法をつくりルーチンワークとして行いましょう。

極端に言うと、解決しない問題にいつまでも怒ってイライラするより、せめて介護する人が楽になる方法を自分で探したり、周りの人に相談します(トイレの失敗を治すアイデアはなかなかみつかりませんが、掃除を簡単にすませるアイデアや着替え作業を手早くするアイデアを聞けばいろいろな答えがあり、自分に向いている方法がみつかるかもしれません)。

(文:原 智子)

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